歴史ある町工場や商店街がまだ多く残っている亀戸。
実はあまり知られてはいないが、信用調査会社東京商工リサーチが行う「社長が住む街ランキング【東日本編】」において、亀戸はトップ10常連入りしている町なのだ。2020年も1,975人の社長が住む街として10位にランクインしている。
そこで純粋な疑問が頭に浮かぶ。
「亀戸にいる社長ってどんな人なんだろう」「そもそも亀戸に本社を置く企業ってどんな会社なんだろう」
百聞は一見にしかず。ということでこの「亀戸社長名鑑」では、亀戸の社長にインタビューを実施することにした。
目次
革製品を作り続けて半世紀。革製品ブランド社長・田村直彦さん
今回インタビューさせていただくのは、亀戸6丁目に本社を置く株式会社ソワールの代表取締役社長・田村直彦さん。
「piccino(以下、ピッチーノ)」というブランドで、半世紀以上もの間、革製品を作り続けてきた。
同じく亀戸6丁目には、ピッチーノの革製品が並ぶショールームがある。
「商品を手に取って、じっくり見てもらいたい」そんな社長の強い想いから、入店は基本的に完全予約制だ。
亀戸を愛し、革を愛し、そして人を愛す。
そんなピッチーノというブランドと、会社の歩みについて、企画担当・塚口妙子さんも交えてお話を伺った。
就職をきっかけに41年間亀戸勤務!奥様とのご縁もこの場所で
社長プロフィール
本日はよろしくお願いいたします!亀戸にこんな素敵な革製品の専門店があったなんて、驚きました!社長は出身も亀戸なのでしょうか?
出身は新潟なのですが、26歳のときに亀戸で働くようになり、現在までの41年間ずっとこの地が職場です。ピッチーノブランドとしては、もうかれこれ半世紀以上にわたって亀戸で革製品を作り続けています。
実は社長の奥さんも、亀戸に8年間勤めていたんですよ。
社長と亀戸の間には強い縁を感じますね…!ところで、社長には社員から呼ばれている愛称など、何かありますか?
愛称…?あだ名は無いですね…。残念ながら。
社長、革製品の修繕が得意だからゴッドハンドで良いじゃないですか。
じゃあ、ゴッドハンドで。
(あだ名ってその場で決めるものだったっけ。)この事業は社長が始めたものですか?
創業したのは会長(先代社長)です。私は二代目ということになります。
当時は製造のみを行う「メーカー」だったのですが、会長はそれでは経営が立ち行かなくなると考え、卸売まで扱うようになったのが現在の株式会社ソワールです。
当時は分業が当たり前の時代だったので、卸売まで事業領域を延ばすのは先進的な決断だったそうです。
ピッチーノに込められた会長の熱い想い
「ピッチーノ」というブランド名にはどのような想いが込められているのでしょうか?
由来はイタリア語で、小さい、かわいいという意味です。「小さくても、輝くものがある会社にしたい」という会長のメッセージが込められています。
なるほど!会長は亀戸にお住まいだったんですか?
はい、亀戸に住んでいました。会長は初め、革職人の見習いとして浅草橋で働いていたので、アクセスや居住環境が良かったここを選んだのでしょうね。
昔の亀戸はまだまだ工場が多く、日本のモノづくりを支えていた土地というイメージが強くありました。
現在のようにファミリー層で賑わうようになったのは、サンストリート亀戸が完成してからですね。
お客様には本当に良いものに出会ってほしい
革製品ブランド「ピッチーノ」の考える、革製品への想いをお聞かせください。
まずは革と真摯に向き合うこと。一枚一枚しっかり見て、この革を使うならどんな商品に仕立てるのがベストかを考え抜きます。
そのこだわりから、ピッチーノでは創業当時から変わらぬ素材、型を使った商品が今でも販売されています。
同じ素材や型を使っているとはいえ、時代時代に合わせてカラーバリエーションやアイテムの種類などで様々な変化をつけてきました。お客様も商品に飽きちゃうんじゃないかなって思うので(笑)。
ショールームに飾られているバラエティ豊かな商品が作られた背景には、そういった事情もあったんですね!
それから、ショールームには「お客様に本当に良いものに出会ってほしい」という願いも込められています。
現代は通販が台頭していますが、一昔前は百貨店などの店頭で実際に商品を手に取ってから買うことが多かったですよね。ピッチーノのショールームでは、その時代のように、革製品をもっと身近で手軽に感じてほしいんです。
ご来店いただく一人一人の縁を大切に
ピッチーノの商品をお求めになるお客様にはどのような方が多いですか?
もちろんネットで検索して初めて来店される方もいますが、やはりリピーターのお客様が多いですね。
ありがたいことに、一度弊社の商品を使ったお客様には安心感と信頼感を持っていただけているようです。
実際に接客してみて、どのようなところにご満足いただけていると感じますか?
お客様がご来店される理由はみな違いますが、一人一人のご縁を大切にし、私たちにできる限りの対応をしています。
たとえば商品の買い替え。先ほどもお話したとおり、ピッチーノでは創業当時から変わらぬデザインで販売している商品があります。
何十年も使ったお気に入りの商品を、今でも新品で手に入れることができるとあって、お客様には大変喜ばれます。
慣れ親しんだものが一番使いやすいのは間違いありません!では、すでに生産していない商品の場合はどうされていますか?
もちろん、お持ちの商品がすでに現行品でないこともしばしばありますが、ピッチーノでは当時の型さえ保管されていればご対応いたします。
また、お客様によってはピッチーノの商品を大切な方の形見にしていることもあるんです。
そうなると修理ができないほど破損しているものでも、思い入れが深くて捨てられない。その場合は、素材の一部を再利用して、リメイクするなどしています。
平和の町・亀戸でこれからも革製品を世に送り出す
昨今は新型コロナウイルスの影響で、商業や飲食店にも大きな影響が出ている。
そんな中でも、お客様一人一人に真摯に向き合い、自分たちにできることを常に全力でやる。革製品を通して繋がった縁を大切にするその姿は、まさに亀戸の良さそのものだ。
インタビュー中、「新型コロナウイルスの影響で半年以上も飲みに行けていないんだよ。行きつけの『鳥雅』の店主にも悪いなあ」と、亀戸の店を心配していた田村社長。
そんな亀戸想いなお二人に、亀戸について聞いてみたところ、「こんなに穏やかで平和な町は他にない」と笑顔で教えてくれた。
この平和な町で、田村社長は「ピッチーノ」の社名の由来のように、革製品を通してこれからも多くの人の心に輝きをもたらすだろう。
店舗紹介
公式HP:https://www.piccino.jp/
住所:〒136-0071 東京都江東区亀戸6-16-7 亀田ビル2F
電話番号:03-3638-2631
アクセス:JR総武線亀戸駅 徒歩6分
開室時間:平日10時~18時
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閉室日:土曜日、日曜日、祝日
Edit by カメイドタートルズ編集部